東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)133号 判決
原告は、「特許庁昭和三四年審判第四三〇号実用新案無効審判事件につき、特許庁が昭和三五年一〇月一三日にした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、「原告は、昭和三四年八月三日付を以て第四四八三二二号登録実用新案権の無効審判を請求し、本件登録実用新案は旧実用新案法第三条の各号に該当し、新規性を具備しないから、同法第一条に違反して登録を無効とすべきものであることを主張した。これに対し、特許庁は、この主張を裏付ける証拠方法を提出していないので、この主張理由を以ては、本件登録を無効とすることはできないとの審決をなし、その謄本は、昭和三五年一〇月二六日原告に送達された。よつて、原告は、本訴において、証拠方法を提出し、右主張を立証して前記審決の取消を求めるものである。」との旨主張した。ところで、本件審判事件記録によれば、本件審判の請求は、昭和三四年八月三日、原告が、株式会社電研社を被請求人として、第四四八、三二二号実用新案権の登録は、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号をいう。以下同じ)第一条の規定に違反してなされたものであることを理由として、同法第二二条第一項第一号により、右実用新案権を無効とすることの審判を請求したものであり、審決も、右当事者間の事件として審決したものであることが明らかである。しかるに、旧実用新案法第二二条第一項第一号の規定による無効審判事件への審決(なお、右規定による審判は、実用新案法施行法第二一条第二項により、抗告審判の審決とみなされる。)の取消を求める訴は、該審判事件の請求人から提起するものは被請求人を、被請求人から提起するものはその請求人をそれぞれ被告とすべきものであることは、実用新案法施行法第二一条第一項により本件に適用される旧実用新案法第二六条によつて準用される旧特許法(大正一〇年法律第九六条をいう。)第一二八条の三但書によつて明らかであるところ、本訴は、特許庁長官を被告とするものであるから、被告とすべきものを誤つた不適法の訴であるものといわなければならない。而して、この場合においては、行政事件訴訟特例法第七条により被告を変更することは許されないと解すべきであるから(当庁昭和二六年(行ナ)第三四号、昭和二八年二月一〇日判決、行政事件裁判例集第四巻第二号三〇九頁参照)、本訴における前記欠缺は、補正することができないものといわなければならない。よつて、民事訴訟法第二〇二条により、本件訴は、口頭弁論を経ないでこれを却下することとする。